これはひどい

なんていうか、もう未収金は全例訴訟でいいじゃないのかな...。

病院団体にとっては肩すかし?
未収金、法的解釈より防止策を優先
2007.8.10

 増え続ける医療機関の未収金について、何らかの解決策を示そうと、厚生労働省は「医療機関の未収金問題に関する検討会」を6月に設置した。これまでに2回の会合が持たれたが、四病院団体連合会側が最も関心を寄せる法的解釈の議論は、今後あまり取り上げられることなく進展しそうな雲行きだ。

 法的解釈とはつまり、未収金となってしまった一部負担金を最終的に誰が負担するのかという問題だ。四病協は「未収金の最終負担者は保険者にある。保険者は医療機関に対して未収金に相当する額を支払うべきではないか」と主張している。

 この主張の基になっているのが、木ノ元直樹弁護士の学説だ。木ノ元氏の学説では、本来、保険者は医療機関に対し全額の診療報酬の支払い義務がある。この場合、患者の支払う一部負担金は、医療機関が保険者から債権譲渡を受けたものと考えられる。つまり、医療機関は保険者に代わって患者から一部負担金を徴収する業務を行っているにすぎないとの考え方だ。

 この論理でいくと、一部負担金の未収は不良債権化であり、不良債権とは現金に等しい価値がなくなったことを意味する。よって木ノ元弁護士は、医療機関は保険者に現金による支払いを要求できるとしている。

 四病協はこの学説を盾に、司法判断を求めるべく、訴訟の準備を進めていた。  こうした中、「まあ、そんなに固いこといわずに、一度、保険者や学識経験者を交えて一緒に議論しませんか」と呼び掛けたのが厚労省だった。四病協としても、「いきなり訴訟に持ち込むよりも、いったん両者の言い分を提示し合うことで妥協点が見いだせるかもしれない」との考えから、厚労省の申し出を了承。未収金問題検討会がスタートした。

◎未収金は医療機関の負担

 今月2日に開かれた2回目の会合は、まさに未収金をめぐる法的解釈が議題となった。

 ただ、厚労省保険局の神田裕二国保課長が「保険者が未収金を徴収できなかった場合は、最終的には病院の債権が未収になる」と従来通りの国の見解を述べたほか、座長の岩村正彦・東京大法学部教授も「被保険者が医療機関に一部負担金を支払うことが法律に明記されている以上、この検討会で契約の中身を議論すべきでない」と述べ、法的な解釈を議論するよりも未然防止策の検討を優先させる考えを示した。

 一部負担金は、医療機関が徴収することが健保法で規定されている以上、たとえ未収となったとしても医療機関の負担になるとの厚労省の考えは以前から一貫している。つまり、木ノ元弁護士の学説は「一部の学者が唱える異論」としか見ていないわけだ。

◎保険者も財政難

 厚労省が法的解釈よりも未然防止策の議論を優先させたい理由はほかにもある。

 この日の検討会で、田中一哉委員(国保中央会理事)は、「国保保険料の1割が未収金になっており、皆保険を維持する上で重大な問題になっている」と述べ、保険者も被保険者からの保険料の徴収に手を焼いている実態を訴えた。つまり、保険者側に「未収金に相当する部分を支払え」といったところで、保険者も財政的な余裕はないのである。

 要するに「起きてしまったことを嘆くより、今後の防止策を考えましょう」ということだ。確かにその通りなのだが、「法的位置付けをしっかり議論してほしい。いざとなれば訴訟も辞さない」と訴えてきた四病協にとっては、肩すかしをくらった格好になってしまった。(山口 尚宏)

http://www.japan-medicine.com/shiten/shiten1.html